五十肩の病態と治療について③・・・船橋市のオステオパシー整体

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今回はシリーズ初回でお話した急性期と慢性期の治療計画について詳しくお話するはずだったのですが・・・、
意外に長くなりそうだったので、急性期の治療計画のみ詳しくお話をします。

 

五十肩は時期によって、治療方針が違います。

それを見誤ると、悪化してしまうこともありますので要注意です。

<目次>
・急性期の治療計画
・なぜ、リンパ循環を良くするのか?
・交感神経を抑制する意義
・筋膜治療の意義
・具体的な治療法

 

急性期の治療計画

急性期は受傷してから2週間〜2か月くらいの間で、炎症が強い状態です。通常炎症は2~3週間でおさまることが多いですが、人によって長く続く場合もあります。

特徴的な所見は以下の通りです。

・患部の鋭い痛み
・自発痛
・運動痛
・炎症部位の圧痛
・腫脹
・熱感
・夜間痛

この時期は肩周囲の組織の硬化もないので、肩の構造的な制限はないですが、痛みのために動かすことができません。

また、就寝時に強く痛む夜間痛も特徴的な症状です。

急性期はまず患部を冷やすこと、また、炎症が強い内は患部の組織が損傷をしているので、刺激はあまりしない方が良いです。

場合によって鎮痛に鍼も有効です。

急性期で最も大事な治療は、リンパ循環を良くすることです

さらに交感神経を抑制し、軽い筋膜の操作を行います

 

なぜ、リンパ循環を良くするのか?

損傷した組織は炎症を起こします。これは組織を回復させるために血液を集める大事な作業なのです。
この時、炎症反応の結果、代謝産物が出てきます。

この代謝産物はいわゆる老廃物ですが、組織に長くとどまると「毒」となります。

関節液を粘質化させ、さらに関節包の肥厚化や軟骨の変形などの原因となるのです

代謝産物による関節内の変化

この代謝産物を取り除くには、静脈やリンパの流れを良くし、関節液をきれいにすることが大事なのです。

 

交感神経を抑制する意義

身体は炎症や痛みがあると交感神経の緊張が亢進します。

交感神経の亢進は痛みや筋の緊張を生み、さらに血管やリンパ管を収縮して循環を悪くします。

はじめは一か所が痛かった五十肩が肩全体に痛みが広がってくるのは、この交感神経の影響が無関係ではありません

 

筋膜治療の意義

筋膜も重要で、筋膜の下には血管やリンパ管、神経が走っています。

筋膜を緩めることは、体液循環や交感神経の状態にいい影響を与えます。

 

具体的な治療法

最初に、リンパを滞らせる構造物にアプローチします。

リンパ管は胸郭上方にある静脈角より静脈に合流します。

静脈角よりリンパが血管へ流入します。

この部分の筋膜にねじれがあると、リンパは静脈に流れることができず、リンパ還流に大きな支障がでます

頚胸筋膜と横隔膜のイメージ

まずは頚胸筋膜、横隔膜を緩めてリンパの還流を促すことが大事になります。

頚胸筋膜の治療の例

そして、交感神経を抑えるために胸椎や肋骨、頚の筋膜にアプローチします。

これらは全て交感神経の経路に関係する部分です。これらに手を施すことにより、交感神経の興奮を抑え、鎮痛、体液循環の向上が期待できます。

肋骨の治療の例

さらに、可能なら、腕や肩周辺の筋膜を優しく操作します。


以上が急性期の治療計画の詳細です。

これだけでも急性期の炎症を抑えるには十分に役に立ちます。

 

ただ、身体が弱っている方は治療の好転反応が出ることがあります。

そのような方は次の日、肝臓や腎臓の治療を行うとよいです。

 

また、急性期は身体が治療の刺激に耐えられない時期なので、時間は短くこまめに来院されることをお勧めします

次回は慢性期の治療計画についておお話をします。