五十肩は正確には肩関節周囲炎と言われ、一般的に肩のまわりの関節や筋肉の弱化によりおこるとされていますが、その原因についてははっきりわかっていません。
この症状は江戸時代には「長命病」と呼ばれていました。それは、当時の平均寿命が50歳くらいで、そのころに発症するのでそう呼ばれていたようです。
五十肩になる年齢も、平均寿命が上がるにつれて、だんだん高齢化してきました。
つまり、この症状になるカギは「加齢」にあるようです。
◎五十肩の症状について
(急性期)
受傷したばかりの時は腕を動かすと肩に鋭い痛みがあり、次第に痛みが腕そして、手指まで広がっていきます。中にはしびれを伴うこともあります。
また、夜寝ていても痛みが生じることも多いです(夜間痛)。
(慢性期)
急性期の痛みが治まると、痛みは鈍い痛みにかわります。
その代わり肩の可動範囲は狭くなります。この可動制限は痛みが無くなっても治らないことがあります。
主に五十肩で特徴的なのが、結髪(髪を結ぶ動作)や結帯(帯を後ろ手で結ぶ動作)ができなくなることです。
よって、日常の服を着る、エプロンのひもを結ぶ、髪を洗う等の動きが困難になります。
◎五十肩の原因について
肩の関節とは一般的解剖では肩甲骨と上腕骨で構成される関節です。
この関節は非常に大きな可動範囲を持つ分、関節が緩いです。だから、それを補強するように多くの筋肉で肩の関節が固定されています。
特に重要なのが回旋筋腱板と呼ばれる4つの筋で、これらは上腕骨を肩甲骨につなぎとめるために常に緊張しています。
この筋が加齢や使い過ぎで疲弊していき、切れかけのゴムのようになり、ある時、吊革につかまった、洗濯物を干したなど、ちょっとしたことや本人は何もした覚えがないくらいの軽い負荷で痛めてしまうのが五十肩やスポーツで起こる腱板損傷の受傷過程です。
受傷の程度にもよりますが、五十肩は目立った筋損傷が見当たらないのがほとんどです。そのような微細な損傷による影響なので、本来傷が治れば痛みの改善しそうですが、そうはいかないのが肩の痛みの難しいところなのです。
肩を動かすとなると肩関節のみで動きが起きているように感じますが、実際は体全体の連動で肩は上がっています。
例えば、万歳をするときに誰かに胸郭を横から抑えてもらって万歳すると・・・万歳がちゃんとできません?
このようなことが、五十肩の方には起きていると考えられます。
つまり、肩以外にも注目しないと五十肩は改善しづらいのです。
◎五十肩で注目すべきポイント
① 肩を動かす7つの関節とそれに付着する筋による障害
肩関節には「解剖学的な肩関節」と「機能的な肩関節」があります。
「解剖学的な肩関節」とは上腕骨と肩甲骨で構成される関節です。
もう一つの「機能的な肩関節」とは以下の7つの関節のことで、これらが連動して動くことにより肩がスムーズに動いてくれます。
また、これらの構造物は肩や腕に行く神経や血管の大事な通り道でもあり、その意味でも肩の機能に大きくかかわっています。
この「7つの関節が」が一つでも障害されれば、肩の痛み、動きの制限の原因となりえます。
つまり、鎖骨、肩甲骨、肋骨、胸椎、胸骨で構成される関節と、それに付着する筋の影響、すべてが肩の痛みの原因となるのです。
②痛みから離れた場所にある筋の影響
「痛みは嘘つき」という言葉があります。これは痛みの発生源が痛みの場所にないことを表す言葉です。
特に五十肩ではそれが顕著にでます。
五十肩でははじめ肩が痛かったのが徐々に上腕、手指の方に痛みが移ってくことが多いです。
これは「放散痛」という現象です。本来、炎症や緊張を起こしている筋を元凶に、痛みが遠くまで広がった状態のことを言います。
例えば棘上筋という、肩甲骨の上縁付近に付く筋からの放散痛は上腕の外側にでます。全く棘上筋から離れた位置に出現するのです。
この放散痛を発生する筋肉のポイントを「トリガーポイント」といいます。
このポイントを押圧して緊張を緩めると非常に有効です。
しかし、さらに付け加えれば、このトリガーポイントを発生させる筋の反対側にさらにその原因となる筋が存在します。
この筋は物理的に押しても緊張が取れません。このような筋にはオステオパシーの手技が非常に有効になります。
③内臓の影響
内臓と筋骨格系は漿膜、間膜、筋膜を通してつながっており、内臓にの機能障害が肩の痛みに影響をあたえることがあります。
大腸、腎臓、肝臓、胃は五十肩の原因となりうる臓器です。
特に横隔膜に接する肝臓、胃はそれぞれ右肩、左肩の痛みの原因になることがしばしばあります。
横隔膜のねじれは胸郭を大きくゆがませま。その影響が肩へ出やすいのです。