仙腸関節炎とは骨盤の仙腸関節に起こる炎症のことです。
最近、仙腸関節炎が腰痛や、ぎっくり腰の原因だというお話をメディアなどでよく見かけます。
ただ、通常急性の炎症は2~3週間でおさまるものなのですが、仙腸関節炎について口をそろえたように言われるのが「治りづらい」という事です。
治療をしても治癒まで数か月かかるという話も聞きます。
ただ、オステオパシー的見地からすれば、仙腸関節炎が治りづらいのは、仙腸関節に負担をかけている、他の原因にアプローチできていないからだという見方もできます。
今回は、仙腸関節炎がなぜ治りづらいのか?そのメカニズムについてお話をします。
・仙腸関節とは
・仙腸関節の役割
・なぜ骨盤のゆがみが腰痛につながるのでしょうか?
・仙腸関節炎のキーワードは「代償」です。
・仙腸関節炎の原因とは
◎仙腸関節とは
仙腸関節とは、骨盤にある関節の一つです。
骨盤は蝶々のような形をしていますが、蝶々の羽に当たる部分を寛骨、胴体に当たる部分を仙骨といいます。
そして、羽と胴体をつなぐ部分が仙腸関節だと思って頂けると理解しやすいかもしれません。
◎仙腸関節の役割
骨盤が重要だと言われる理由の一つとして、上半身と下肢の移行部としての役割が挙げられます。
解剖学上、仙骨までは背骨で、寛骨からは下肢と言われます。
つまり、骨盤は上半身からの負荷を下肢へ、下半身からの負荷を上半身で分散させていいます。
そして、その役割を一手に担うのが寛骨と仙骨のつなぎ目である仙腸関節なのです。
ちなみに、この仙腸関節の機能は2足歩行である人間特有のものです。
人間は進化の過程で2足歩行を手にいれたのと同時に、腰痛という病とも向き合わなければならなくなりました。
なんとも皮肉なものです。
◎なぜ骨盤のゆがみが腰痛につながるのでしょうか?
骨盤で大事なのは水平性です。
骨盤を後ろから見た時、仙骨が地面と水平であることが理想だとされています。
オステオパシーでも「骨盤が水平なら全てがうまくいく」という言葉もあります。
しかし、この水平性が失われた場合どうなるのでしょう?
例えば骨盤が歪み、右に傾くとします。そうすると腰椎が右に傾いたままになります。
それを補正するために腰椎が左へカーブします。そして、身体全体に歪みが波及することになります。
仙腸関節炎では、このように歪んだ身体の負荷が最も仙腸関節に集まったため発生するものだと考えられます。
◎仙腸関節炎のキーワードは「代償」です。
ここまでは、仙腸関節炎のメカニズムについてお話しました。しかし、そもそも骨盤は歪ませる原因は何なのでしょうか?
そのキーワードとして「代償」という言葉を理解する必要があります。
人の身体はどこか動かないところが出ると、他の部分でその動きを補う事により、身体の均衡を保とうとします。
これを「代償」といいます。
分かりやすく言えば、動かないところの代わりに他が頑張って動くことにより、動かないところをサポートしてあげているのです。
骨盤の歪みもこの「代償」の結果生まれます。
例えば、右膝が過去の事故などで動きづらくなっていて、それを代償しようと他の部分が補正を始めます。
その結果骨盤が歪み、仙腸関節に負担が来ます。
つまりこの例の場合、代償の原因である右膝にアプローチしなければ、いつまで経っても仙腸関節の負担は抜けず、頑張り続けなければならないのです。
代償は何が原因で起こるかわかりません。だから、原因となった部分を見極めて施術を行う事が重要になります。
そうでなければ、いつまでも仙腸関節炎が治らず、腰痛に苦しむことになります。
◎仙腸関節に負担をかける要素とは
代償を起こす原因としてはいくつか考えられます。
まず、胸郭の捻じれは大きく骨盤のゆがみに影響します。
胸郭からは腹筋群や腰方形筋をはじめ、骨盤に付着する筋・筋膜が多数存在します。
胸郭の捻じれはこれらの筋・筋膜を緊張させ、骨盤に歪みを生じさせます。
また、下肢の筋や股関節周辺の筋も骨盤に付着するので、股関節の固い方は要注意です。
頭蓋骨の問題も見逃せません。仙骨は硬膜でつながっており、頭蓋骨の歪みは骨盤を歪ませます。
このように、仙腸関節炎の治療のためには、まず仙腸関節にかかる負担を取り除いてあげる必要があります。さらに、仙腸関節に機能異常があるなら、治療してあげると早期の治癒に有効になります。
痛みの箇所に捉われるのではなく、トータルバランス的に見なければならないという事です。
もし、腰痛や骨盤周辺の問題が気になる方は、お電話やお問い合わせフォームにてお気軽にご相談くださいませ。