首・肩のこりや背中のはりは、デスクワークが主流の現代社会において多くの人を悩ます問題の一つです。
また、近年、「VDT症候群」といわれる、パソコン作業を長時間行うことによる、目や体、精神に支障をきたす疾患が問題視されています。
症状としては以下のようなものが特徴的です。
・首、肩、腰のこりや痛み、重さ
・背中の痛みや腕や手の痛みやしびれ
・目の問題
・精神的な症状(イライラや食欲不振、不安感)
◎肩・首・背中の緊張はなぜ起こるのか?
・2足歩行の宿命〜重心線について〜
まず、肩・首・背中の緊張の原因をを知る上で、人間の重心線の理解が必要です。
人は二足歩行になった時から、重力の影響を受けやすい存在となりました。
なぜなら、4つ足なら単純に4つの柱で体を支えるという構造が、
2足歩行になったとたん、突っ立った背骨や頭を支えるという、非常に不安定な構造になったからです。
人の立位を支えるのは、無意識下の筋肉の緊張バランスです。
私たちの体は気付かないうちに、大変なまでの仕事を担う事となったのです。
人の重心線を横からみると、
・耳の穴
・肩関節
・腰椎3番の椎体
・仙骨上面の前3分の1
・股関節
・関節のやや前方
・外くるぶしのやや後方を通るのが理想です。
しかし、この重心線が崩れると、たちまち人の体は重力の抵抗下にさらされてしまうのです。
・デスクワークによる体への影響
デスクワークなどの座位による仕事は、特に重心線が崩れる姿勢になりやすいです。
どうしても画面に顔が近づきがちになるので、頭が前に出るような形になります。
この重心線から逸脱した頭の重みを補正しようと、背中や腰が丸まる姿勢となります。
本来姿勢を保持するための筋肉は、重心線上に体が維持されているときには最小限の力で姿勢維持をできます。
しかし、重心線から外れた姿勢を保持するには大きな力が必要となり、筋や靭帯に負担が来ます。
しかも頭は非常に重い部分ですので、それを体が支えるのは莫大な労力が必要なのです。
◎肩・首・背のはりの原因とその治療
デスクワークによる肩・首・背のはりや痛みは以下の要因から引き起こされます
・頭・首を支える筋、骨格への負担
頭・首を支える筋は、背骨だけでなく肩甲骨、鎖骨、胸骨、肋骨へ着きます。
つまり、頭や首への負担はそのまま肩周辺に痛みを発生させるのです。
特に首の筋肉はあまり知られていませんが、長いもので胸椎の6番まで付着しており、十分首だけでなく背中にも痛みを発生させる可能性があるのです。
また、舌骨から肩甲骨に付着する「肩甲舌骨筋」は肩の痛みに関する筋として、オステオパシーでは注目されています。
ですから、頚椎、胸椎はもちろんのこと、肩甲骨・鎖骨・胸骨・肋骨で構成される関節や、そこに付着する筋肉にアプローチする必要があります。
・胸郭への負担
丸まった姿勢は胸の緊張を生み、さらに呼吸筋である横隔膜を収縮させます。
胸筋は免疫機能に重要な筋で、横隔膜は呼吸に重要な筋です。
これらの障害は免疫力をさげ、酸素不足も生むので、体はさらに重く、元気がなくなります。
さらに横隔膜の神経が出るところは頚椎3番から5番で、その周辺の筋も緊張します。
そして呼吸の浅さにより、首の筋肉さらにが緊張していきます。
また、横隔膜は内臓のリンパ循環に関連しています。
横隔膜の障害はイコール内臓への負担として、食欲不振などにあらわれます。
この場合、胸郭を構成する胸椎、肋骨、胸骨の治療や横隔膜の治療が必要となります。
場合によっては機能が障害された内臓へのアプローチも必要になります。
・目への負担
身体の機能の一つとして、目線を水平にするという機能があります。
例えば、左に傾いたとすると、
そこから目線を水平にするように身体は自然に頭の位置を調整します。
目線を水平にするためには頚部の筋が無意識化で緊張します。
特に後頭下筋群という後頭部から頚椎1番、2番に付く筋肉が緊張しやすくなります。
また、後頭下筋群の間には頭部の感覚を司る神経が通ります。
よってこの筋の緊張は頭痛の原因ともなりえます。
後頭下筋群の治療や、後頭骨と頚椎の関節(後頭環関節)、頚椎1番と2番の間の関節も重要なポイントとなります。