治療は患者様の安全と安心を第一に考えなければなりません。
心と体は表裏一体です。
患者様が不安な状態で施術をすれば、思わぬ不利益が生じる場合もありまます。
以前、そのような事例があったので紹介したいと思います。
◎腰の痛みと下肢のしびれの症例
現在、腰痛と下肢のしびれで担当している患者様がいらっしゃいます。
特に下肢のしびれがひどく、近くの接骨院に通っていたのですが回復がかんばしくなく、当院に来院されました。
歩くのもつらく、仰向けで長く寝てられません。身体を後ろに反ると下肢にしびれも出ます。
この時、交感神経が亢進しており、腰椎2番と腸骨筋、仙骨、そして頚椎に問題がありましたが、治療後は後屈してもしびれも出なくなり、症状はだいぶ改善しました。
治療後、患者様から今通っている接骨院には通った方が良いかと尋ねられました。
本当は週1回来院して頂きたかったのですが、時間の都合上、月1回程しか来れないことと、接骨院に行けば多少気持ち的にも楽になるという事だったので、併用して来院する事をお勧めいたしました。
次回の来院の際はしびれと痛みはまだあるようでしたが、治療後に改善しました。ただ、1ヵ月空いたとはいえ、回復度合いが遅いような気もしました。
さらに次の来院の時に、その患者様はこんな事おっしゃいました。
通っている接骨院では、首と胸椎に「ボキボキ」と骨を矯正する治療をやってもらっているようです。
その患者様はボキボキされる治療が苦手なので、やってほしくはないそうなのですが、院長の方針で「これをしなければ治らない」という事なので仕方なくやってもらっているそうです。さらに胸椎の治療の時は臀部が痛いそうです。
私は自分が怖いと思う治療は避けた方が良いことと、「ボキボキ」の治療・・・カイロプラクティックはやめてもらうようにお願いした方が良いことを伝えました。
そして、次の来院の時、症状が飛躍的に改善していました。カイロプラクティックの治療はやめているようです。
◎なぜ、治療が治癒の妨げになったのか?
おそらくこの場合、治癒の妨げになっていたのはカイロプラクティックの治療が原因だったと思われますが、なぜこのようなことになったのでしょうか?
まずはじめに誤解がないように言っておきたいのは、カイロプラクティック自体が悪いのではないという事です。
カイロプラクティックは素晴らしい手技です。
オステオパシーにもHVLAというカイロプラクティックのような手技がありますが、海外ではその手技を多用する先生も多いです(実際にアメリカの先生がHVLAを主体に治療を行い、手のしびれを改善させたのを目の前で見たことがあります。)
しかし、カイロプラクティックを行う先生の中にはきちんと診断をせず、正しい方向に矯正をできていない先生もいます。本来、歪みの制限の方向を詳細に診断し、手技を行うのがカイロプラクティックなのです。また、矯正が目的なので、必ずしもボキボキ鳴らなくても良いのです。
ただ、その接骨院の先生の技術的問題がどうだったかは私にはわかりません。
私が思うにこの場合、怖いと思う事を無理やりやられたその精神的なショックが一番の原因だと思います。
例えば首に「ボキボキ」の手技をされるのが苦手な方は、ただでさえ力が入ってしまいます。そこで、さらに無理やり「ボキボキ」をされれば、さらに身体の防御反応として筋肉が硬直します。この硬直は首だけでなく、全身に及びます。
この時点で、身体はその怖さを覚えてしまっているので、また首に「ボキボキ」されそうになると、自然と体が防御反応により緊張してしまうのです。
こうなるともう「トラウマ」レベルの話になってしまいます。心も体も「怖い」というトラウマを抱えているのに無理やり「ボキボキ」をされれば、身体に大きな不利益をもたらします。
オステオパシーでは肉体と精神と魂は三位一体と考えます。このいずれかにも不利益をもたらす治療ならば、やはり避けた方が良いのです。
本来、施術というものは患者様の安全と安心が第一で、そのために手技にもたくさんの引き出しが必要だと思っています。
どんなに効果的な手技でも、患者様の安全と安心を考えなければ、効果がないどころか、症状を悪化させてしまう事もあります。
もし、皆様も何か治療を受けていて、「あれっ?」と思ったのなら、施術者に伝えた方が良いと思います。
それは当院で治療を受ける際でも同様です。何かありましたら、遠慮なくお伝えくださいませ。